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寄稿 シニアソムリエ 石田通也氏 ③ 「ワインラベルとetiquette(エティケット)」

ラベル新聞2013年10月1日号~毎月1日号に連載「過去記事プレイバック」
 
今回から2回にわたり、ラベルのスタイルやその傾向について紹介します。
 
クラシックとモダン
 
意外かも知れませんが、世界のワインにおけるラベルデザインは、はっきりとその国のスタイルが決まっているわけではなく、原産地呼称法に基づいた表記義務以外のデザインは自由です。従って、表示言語か、伝統や文化の何かをモチーフとした絵や文字を載せる以外は、その国らしさを表すものはほとんどありません。
分類するとすれば、世界共通で「クラシックスタイル」か「モダンスタイル」というところでしょうか。
クラシックスタイルは、前回のラベル表示義務事項で紹介したように、表ラベル全面に内容を表記する傾向があり、文字もベーシックなものや、伝統的な書体を使用しています。絵や写真などはあまり載せませんが、自分の畑やワイナリーの絵を描く傾向があります。特にフランスの銘醸地ボルドーでは、自らのシャトーの絵をラベルに描く事が多く、もう一つの銘醸地ブルゴーニュでは、文字だけのものが多く見受けられます。
商業的なボルドーやシャンパーニュ地方ではラベルのモダン化が進み、米国を始めとするニューワールドと呼ばれる地域でも、モダンなラベルが目立つ一方、ブルゴーニュやドイツなど、零細農家の多い地域では、クラシカルなラベルが多い傾向にあります。特に、ブルゴーニュは絵すら少なく、文字のみのラベルが目立ち、まさに中身で勝負といった気概が感じられます。
一方、モダンスタイルの特徴としては、シンプルなものが多く、表ラベルはスッキリとおしゃれなデザインを施し、表示義務事項などは、裏ラベルやネック部分に表示されるケースが増えています。また、コミカルでユーモラスなものや、最近では前衛的な絵や写真をラベルに載せているワインも見受けられます。これまで個人的には、クラシカルなラベルが好きでしたが、最近は本当にセンスの良いモダンなラベルも増えており、何が良いかは、センスの良しあしと嗜好による影響が大きい気がします。
ただ、ラベルに気を遣っている、または思い入れを込めている生産者は、中身のワインも上質な事が多いので、うんぬんで割り切れない部分もあります。しかしながら逆の例として、飾り気もなく文字だけの武骨なラベルなのに、中身は絶品、というワインもありますので、一概には判断し切れないところが難しいところです。ワインは偶然の産物ではなく人間が造るものですので、人の個性が反映されてしかるべきというところでしょうか。
ラベルも中身もこだわっているワインを人間に例えると、社会的にしっかりした方で身だしなみもキチッとしているという感じ。無骨なラベルのワインは、服も身の回りの装飾品も、髪型や身だしなみもあまり頓着ないが、人間性や仕事人としては素晴らしい方、といった感じでしょうか。どちらのタイプを肯定的に見るかは、受ける側次第。いずれにしても「中身」はしっかりしていたいものです。
 
ラベルの嗜好傾向
 
一般消費者のワインラベルにおける嗜好傾向としては、「ワイン通」と呼ばれるヘビーユーザーの方々は、クラシカルなラベルを好み、女性は、圧倒的にモダンなラベルを好む傾向にあります。おしゃれなデザインが人気で、特にかわいらしい絵が描かれたタイプを好まれているのがハッキリと見受けられます。また、気に入ったラベルを見て購入する事を「ラベル買い」と呼び、中身よりもラベルデザインの良しあしでワインを購入する事を指します。ワインの選び方は飲まれる方それぞれで、ワインに対して抱くニーズは、まさに千差万別と言えます。
ちなみに男性は、ラベルからの情報を重視する傾向が強く、産地、年代、ブランドなどを重視する権威主義の方が多く、権威あるものはある程度高くても仕方がない、と考える傾向があるようです。それに対して女性は、ブランドもさることながら、自身にとっておいしいかまずいかを重視する実質主義の方が多く、見た目がかわいらしく、味も良く、なおかつ価格も控え目な物を求められます。それだけ女性はシビアな感覚を持ち合わせている方が多いので、世間一般にお店などは、女性に支持されれば大丈夫、と言う方程式が成り立っているのではないでしょうか。
これらはあくまでも傾向ですので、すべての方々に当てはまる訳ではありませんが、少なからず、皆さまにも思い当たる節はあるのではないでしょうか。
 

著者:石田通也氏

1970年、長野県明科町(現安曇野市)生まれ。大阪あべの辻調理師専門学校で料理を学んだのち、㈱プリンスホテルへ入社。各レストランに配属されサービスを学ぶ。「シニアソムリエ」「きき酒師」「ビアテイスター」などの資格を持ち、05年には、「第4回全日本最優秀ソムリエコンクール兼第12回世界最優秀ソムリエコンクール日本代表選考会」でベスト16に。現在は、長野県松本市深志のフレンチレストラン「Le SALON(ル・サロン)」オーナーとして活躍する傍ら、ホテル、レストランのイベントプロデュースなども手がける。11年に㈳日本ソムリエ協会技術委員・上信越支部地域委員、同年、長野県原産地呼称管理制度日本酒・焼酎官能委員に。

 
 
 

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