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寄稿 シニアソムリエ 石田通也氏 ② 「ワインラベルとetiquette(エティケット)」

ラベル新聞2013年10月1日号~毎月1日号に連載「過去記事プレイバック」

シニアソムリエの石田通也氏に、5回にわたりワインのいろはと世界のラベルについて寄稿いただく。  
 
「ラベル表記」でワインの味わい表現

日本ではあまりなじみのない感覚かもしれませんが、欧州などワイン先進国には「ワイン法」が制定されており、厳しく品質が管理されています。特に欧州では「INAO」のほか各国で制定されている「原産地統制呼称法」があり、ワイン産地の特性を守るため、葡萄品種や栽培方法、醸造方法からアルコール度数、さらには熟成期間など多くの事項が法律で厳しく規定されています。これによりボルドーはボルドーらしく、ブルゴーニュはブルゴーニュらしい産地の特性を生かしたワインのスタイルが守られているのです。

ラベルの表記方法

 

 

 

 

 

 

ワイン法には「ラベル表記義務」事項も定められており、生産地域やアルコール度数、生産者名、容量などの項目が国ごとに定められています。大きくは「日常消費ワイン(テーブルワイン)」と、「原産地呼称付上級ワイン」に分かれ、さらに国別に細分化されカテゴライズしています。 基本的に①国名(フランス等)②地方名(ブルゴーニュ等)③地域名(コート・ド・ニュイ等)④村名(ヴォーヌ・ロマネ等)⑤畑名(ロマネコンティ等)と、エリアが狭まるほど上級なワインとなります。ここで難解になるのが、ワイン法は原産地保護が目的のため、その地域の名称をすべて覚えなければどのような感じのワインなのか分からない、というところです。使用されている葡萄も各地域で決まった品種があり、それも覚える必要があるほか、甘口なのか辛口なのか、赤か白か発泡性なのかも原産地呼称法を知らなければ判断できない場合があります。これが欧州の伝統的なワイン(ワイン業界では伝統的な産地をオールドワールドと呼ぶ)を難解なものにしている最大の要因なのです。 しかしながら、一度覚えてしまうと非常に分かりやすく、味わいもイメージしやすいという側面があります。中でもドイツのワイン法は厳しく、ラベル表記義務事項も非常に厳格です。故に、ドイツワインはラベルと中身の差が最も少ないワインと言われ、われわれプロも安心して購入できる産地の一つなのです。 ところが、その厳格過ぎるラベル表記が、逆に一般消費者には難解すぎて分かりにくい、ということで、品質では優れているにもかかわらず、売り上げが低迷するという事態が起きました。そのため、ドイツでも分かりやすいラベル表記を模索し、辛口表記の方法や、フランスのグランクリュ(特級畑)の定義を用いたラベル表記等で工夫しています。 一方、オールドワールドでラベルと中身の差が大きいと言われていたのがイタリアワインで、世界中のプロからも「原産地呼称が当てにならない」という声が高まり、イタリア政府も本腰を入れて法のテコ入れを始め、近年ではかなり整備されてきているようです。

「ラベル表記」 難解か分かりやすさか

ニューワールドと呼ばれる近年高品質なワイン産地として認められてきたエリア(米国、オーストラリア、ニュージーランド、チリ、アルゼンチン、南アフリカ等で、ワイン造りの歴史は古いが世界的に認められたのが近年)では、葡萄品種を表記することで一般消費者に分かりやすくアピールし、売り上げを伸ばしてきました。その先駆けが米・カリフォルニアのワインで、今ではオールドワールド筆頭のフランスも、その葡萄品種表記を真似るところが増えてきています。 葡萄品種表記は、一般消費者には大変分かりやすく、自分の好みの品種さえ覚えておけば、近いニュアンスのワインが購入できるメリットがある反面、同じ品種で全くニュアンスの違ったワインの味わいやスタイルを特定するのが困難で、グレードも各社規定のブランドを覚えなくてはどのクラスのワインかが分かりにくい側面があります。難解ではありますが、欧州のラベル表記の方が、全体として捉えるにはプロには分かりやすいと思います。 ラベル表記の分かりやすさは重要ですが、その本質が正確に伝わらなくては本末転倒です。一方、難解なものには理解する楽しみがあります。それぞれ良い面、マイナス面があるのです。分かりやすさに目をくらませられ、物事の本質から目をそらせられないよう、社会生活においてもかくありたいものです。

著者:石田通也氏

1970年、長野県明科町(現安曇野市)生まれ。大阪あべの辻調理師専門学校で料理を学んだのち、㈱プリンスホテルへ入社。各レストランに配属されサービスを学ぶ。「シニアソムリエ」「きき酒師」「ビアテイスター」などの資格を持ち、05年には、「第4回全日本最優秀ソムリエコンクール兼第12回世界最優秀ソムリエコンクール日本代表選考会」でベスト16に。現在は、長野県松本市深志のフレンチレストラン「Le SALON(ル・サロン)」オーナーとして活躍する傍ら、ホテル、レストランのイベントプロデュースなども手がける。11年に㈳日本ソムリエ協会技術委員・上信越支部地域委員、同年、長野県原産地呼称管理制度日本酒・焼酎官能委員に。

 
 

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